バックナンバー BackNumber
 
"ビジョン・プロセシング"マガジン『未来からの問い』
  発行日: xxxx年xx月xx日
このバックナンバーをメールで受け取る
ここで入力したメールアドレスはこのバックナンバーを送信するためだけに利用され、メールマガジンは読者登録されません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 組織進化"刺激"マガジン『未来からの問い』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    2022.4.10  Vol.110

1.【未来からの問い】修羅場体験2.0 〜「修羅場」が本当に生み出していた
ものとは〜 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
突然ですが、みなさんは「修羅場」という言葉からどんな様子を思い浮かべま
すか? ドラマで描かれるような、人間関係のもつれで激しい争いが行われる
場面を想像される方も少なくないかもしれません。 
元々は仏教・インド神話等の伝承で阿修羅と帝釈天の争いが行われたとされる
場所を修羅場といい、そこから転じて「激しい戦いや争いの行われる場所や
場面」を指すようになったそうです。 


企業における「修羅場体験」というと、特に次世代リーダー候補人材など、
将来を期待する人材育成におけるいわゆる黄金律のように語られています。
具体例として、20年ほど前にホンダの人事担当の方からこのようなお話を
伺ったことがあります。 

「人材育成は研修の実施でなんとかできるとは思っていません。ホンダ式の
人材育成は『2階に上げて梯子を外して、1階から火をつける』です」

後戻りできない状況や、極限の状況に追い込んで知恵を絞らせることの例えだ
そうです。書籍等でも紹介されているのでご存じの方も多いかもしれません。 

修羅場体験という言葉で表現されていることの一般的な意味は、あえてストレ
ッチの効いた状況に将来有望な人材を配置し、一皮むけた成長を期待する、
といったものではないかと思います。 

しかし令和の現代において、こうした修羅場体験に対する期待は果たして適切
なものだといえるのでしょうか? 
ミレニアル世代以降の持つ就業観は大きく変化しており、就社意識はどんどん
薄れてきていると、様々な調査結果でも言われてきています。
自分らしさを発揮できることを重んじ、プライベートも大切にし、
そして転職にも前向きな人材が増えてきている、そうお感じになっている方も
多いのではないでしょうか。 

その就業観の変化があるなかで、 「大きな期待をかけているからこそ修羅場
体験に放り込み、その圧の中で踏みとどまらせ耐えさせようとする」

このような、修羅場『圧力鍋』環境が人を育てるというマインドセットによる
育成施策そのものが、ミレニアル世代のニーズにマッチしていないと思われて
も仕方がありません。 
これからの時代、かつての修羅場体験を経験則だけで再現するのでは通用しな
い場面がどんどんと増えてくるという予感があります。 
そこで今回は修羅場体験を改めてひも解き、その中で浮かび上がった原則から
これからの時代に通用する「修羅場体験2.0」について考察したいと思います。

改めて、修羅場体験によって何が実現しているのでしょうか? 
1つ目は、その人の思考の枠組みであり、同時に思考を制限しているマインド
セット、すなわち人が無意識に抱えている考え方、価値観、信念などにひび割
れが入るようにしていること。 
そして2つ目は新しい仕事の反復によって能力を高めることだと考えます。

2つ目の「能力を高める」ことは、時間の経過とともに反復によって可能にな
ります。 『慣れるかどうか』だとも言えるでしょう。 
そのため今回は「能力を高める」ことについては詳しく言及せず、チャレンジ
が必要になる、「マインドセットにひび割れを入れる」ということに焦点を
当てていきます。

そもそもマインドセットはどうやって形作られているのでしょうか? 
諸説あると思いますが、端的に言えばその人が過去の経験を通して得た
『持論』、それも、意識的なもの・無意識的なもの、どちらも含んだ持論の全
てがマインドセットである、と置いていただくとよいと思います。 

既存のマインドセットが通用しているうちは良いのですが、時代や環境の変化
などによってそれが通用しなくなったとき、自らのマインドセットを変化させ
ず得意なことだけをやり続けて無駄に現状維持をさせてしまう、ということは
往々にしてある事象ではないでしょうか。 
例えば、シニア層が新しいチャレンジをせず過去の自分の経験だけで何とかし
ようとしている状況が問題とされることが多いのは、マインドセットの固着化
が原因だといえるでしょう。 

これらを踏まえて、修羅場体験1.0とは、凝り固まってしまった過去の経験の
内側に閉じこもり、小さくまとまってしまいそうになっているところから
無理やり外に引きずり出すかのように圧のかかる環境に放り込み、その枠を壊
そうとしていたこととも言えるのではないでしょうか。 

ここで注目しておきたい点がいくつかあります。 まず、こうしたやり方が現代
における就労観にはマッチしないのではないか、という問題提起は先に述べた
通りです。 

更にもう1つ重要な点としては、「選ばれし、期待のエースにこそこの修羅場
体験をさせたい」と思う期待の中にこそ、落とし穴があるのではないかという
ことです。その落とし穴とはなんでしょうか。 

「エース人材に修羅場体験をさせたい」という意識の下には、知らず知らずの
うちに 『修羅場体験をさせた人材は一皮むけて成長してくれるだろう』という
過去の成功体験による経験則が入り込んでいるだけでなく『あのエース人材た
ちは、ずっとわが社に残ってくれるだろう』という暗黙の前提が存在してしまっ
ています。 

こうした会社の都合から物事を考えるマインドセットについて、昨今「カンパ
ニーセンタード」という言葉で表現されるようになっています。 
このカンパニーセンタードなマインドセットに基づいているのが修羅場体験1.0
であるとしたとき、 修羅場体験2.0はそれとはまったく異なるマインドセット
になると考えています。そのヒントになるのが「ピープルセンタード」です。 

この言葉は、カンパニーセンタードとの対比で語られていますが、「会社都合」
で社員のことを考えるのではなく、社員のことを中心に考えた経営や組織運営
をするというものです。 
「社員中心で会社経営を考える」という考え方は人によっては単なる理想論で
あり、口当たりのいい謳い文句に過ぎないと感じる方も少なくないのではない
かと思います。 

しかし、ミレニアル世代だけでなく、働くことに対する意味づけが変わってい
る社会においては、会社を中心に据えた考え方自体が既に時代錯誤だと思われ
てしまう時代になっています。 

「社員中心で考える経営は、甘えを助長するだけで経営にならないのではない
か」というもっともな懸念を超えて、それでも「ピープルセンタード」な形で
経営や組織運営をいかに実現していくのか。
それが現代の組織に問われていることは間違いないでしょう。 

では、ピープルセンタードな修羅場体験というものはありえるのでしょうか? 
その可能性を模索するために提示したいのが修羅場体験2.0です。 
この修羅場体験2.0は「エース人材のリテンションと”一皮むける”」
という一見相反するこの2つを高度に両立させることを目指していくことであ
り、更にそれを別々のものとしてではなく、一体のものとして両立できる機会
をつくることが本質的なチャレンジとして問われることになります。 

具体的には、エース人材に対して「強すぎる圧力にならない程度の修羅場体験」
をどうデザインするかも問われていることの一つになるでしょう。 
そこで大事になるのは、会社の都合から修羅場体験をさせるという観点ではな
く、エース人材の側に立って、
『あなたにとって修羅場経験で一皮むけるということはどういうことか?』
『それが可能になったら、あなたの人生がどのように広がっていくのか?』
ということを丁寧に本人と会話していく必要があると考えます。 

まずは本人が実現したいと思っている目標や方向性に対して、会社はサポート
の用意がある、ということを姿勢として示せるかどうかが重要になってくるの
ではないでしょうか。 

とはいえ、仕事経験からでしか学べないこともあります。仕事の圧力鍋に
入ってもらうことは従来通りであったとしても、
・そのつらい経験が本人にとってどんな意味を持ちうるものなのか
・その難しい課題を乗り越えていくために何が問われることのなるのか
ということに対してメンタリングできる体制を作ることが望ましいでしょう。


今回は「修羅場」について考えました。
激しい環境変化の中においても盲目的にならずいかに物事の本質をつかめるか
が、今後ますます求められることなのかもしれません。


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
          【未来からの問い Vol.110 】           
                                
あなたの会社・組織での取り組みで、これからの時代にも通用する”2.0”に
アップデートすべき取り組みがあるとするならば、それはどのようなことでしょうか? 
                                
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
                                                 中土井 僚


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2.セミナー・ワークショップ情報

■リーダーシップ・シフトプログラム エントリーコース
ケースで学ぶ仕事やプライベートに活かせるU理論に基づく問題解決法をご紹
介します。

会場  :ZOOMにてオンライン開催
参加費:3,300円(税込)

<詳細・お申し込み>
日程  :2022年4月27日[水] 19:00〜21:30
http://ptix.at/uyu4oV



■リーダーシップ・シフトプログラム ベーシックコース29期
自分自身と周囲の「自分らしさ」を解放することで、その人の強みが十分に発
揮される状態を創り、一人一人と場の進化をもたらし続ける全く新しいテクノ
ロジーをご提供いたします。

日程 :2022年4月16日[土]〜4月17日[日]
    1日目9:50〜19:30
    2日目9:30〜19:00
会場  :浅草橋ヒューリックホール& カンファレンス
参加費:132,500円(税込)
   
<詳細・お申し込み>
http://ptix.at/sPRTbd



■リーダーシップ・シフトプログラム ベーシックコース30期

日程 :2022年6月11日[土]〜6月12日[日]
    1日目9:50〜19:30
    2日目9:30〜19:00
会場  :両国KFC Hall&Rooms
参加費:(通常価格)132,500円(税込)
      (2022/5/11までの早割価格)102,500円(税込)

<詳細・お申し込み>
http://ptix.at/kP5oi0



■【満席御礼】自己組織化チーミング手法「SOUNDメソッド」SOUNDコーチ
養成講座 初級編
「SOUNDカード」を活用した対話の場づくりを体験し、変化が激しく先行き不透明
な状況下でもチームメンバーが目的や意義を共有・合意し、チームとして共進化
(Co-Evolve)していくことを可能にしていきます。

日程 :2022年7月2日[土]
    10:00〜18:00
会場  :KFC Hall&Rooms Room109
参加費:55,000円(税込)

<詳細・お申し込み>
http://ptix.at/jeo5Dx

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
※新型コロナウイルス感染症の対策/オープンセミナー・イベント実施に関する
最新情報は、当社サイトの専用ページにて随時更新・発信しています。

https://bit.ly/3AHpIzK
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


3.動画コンテンツ配信情報

株式会社アントレプレナーファクトリー様と協働で制作しました、組織開発の
理論と実践について解説した動画コンテンツを提供しています。

◎『組織開発で使える「成人発達理論入門」』<新>
成人発達理論の基本をおさえ組織開発に活かす36本
https://www.enfac.co.jp/contents/aditi-entry/

◎『オンラインにおけるチーム運営と組織開発』
急速な環境の変化を変革の機会へ導く知識と実践の講座73本
https://www.enfac.co.jp/contents/om/


━━━━━━━━━━━━━━<発行者情報>━━━━━━━━━━━━━━
組織進化"刺激"マガジン『未来からの問い』
●発行責任者:山根 恭子
●発行元:オーセンティックワークス株式会社
●事業内容:組織進化コンサルティング
 オーセンティックワークスは、社会変容テクノロジー「U理論」を活用した
 プロセスコンサルテーションによって「ソーシャルフィールド(社会的な場)」
 を転換し、他責・対立・迷走等、閉塞感のある組織を創発的な組織へと進化
 させます。
●URL:http://www.authentic-a.com/
●お問い合わせ:aw-office@authentic-a.com
●バックナンバー:http://backnum.combzmail.jp/?m=r8v6
●配信中止はこちら:https://regssl.combzmail.jp/web/?t=mt23&m=r8v6
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      Authentic Works  2022 All Rights reserved.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━