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組織進化"刺激"マガジン『未来からの問い』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2017.7.30 Vol.30
1.ビジョンにまつわる混乱と誤解
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U理論のプロセスにおいて、Uの谷を潜り、プレゼンシングに至った後、次に迎
えるのは「結晶化(クリスタライジング)」のステップになります。その「結
晶化(クリスタライジング)」のステップでは、ビジョンと意図が出現します
が、ここでいうビジョンは私たちが慣れ親しんだ意味とは異なっています。
『出現する未来』の中では、通常私たちがビジョンだと思っているものを「力
のないビジョン」。プレゼンシングに至り、源(ソース)と繋がって生まれて
くるものを「力のあるビジョン」という言葉で紹介されています。
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ここ数年、ビジョンという言葉が多用されるようになったが、本来の意味が置
き去りにされている場合が多い。ビジョンは崇高な理想でもなければ、鼓舞す
るための言葉でもない。実用的な手段なのである。ビジョンのもっとも単純な
定義は、自分たちが生み出したいもののイメージである。
力のあるビジョンは、思想ではなく、 源(ソース) と、その 源(ソース) にた
えず繋がる能力から生まれる。力のあるビジョンは、今、この瞬間に依拠して
いる深い目的を表現したものである。ホースにつけたノズルが水の勢いを増す
ように、明確なビジョンとは、プレゼンシングから浮かび上がった使命感とエ
ネルギーに繋がり、焦点を絞るものなのである
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それに対して、「力のないビジョン」は、『Uのはるか左上』、すなわちダウン
ローディングな状態で作られていると言っています。実際、ほとんどの組織
(特に営利企業)ではビジョンに関して、以下のような固定観念やそれによる
混乱を私自身、何度も目の当たりにしてきました。
・みんなの意見が食い違って堂々巡りをしてしまっている状況、それぞれ自分
の責任範囲を限定し、評論ばかりで当事者意識がない状況、気持ちが一つに
なっておらず、水面下でお互いの誹謗中傷を言い合っている状況など、健全で
はない状態を何とかしようとして、「同じ目的・目標に向かって、みんなが余
計なことにわき目を振らず、それぞれの役割を果たせるようにしたい」という
理由から、ビジョンを切望するが、共感が生まれず、ビジョンの話の土壌自体
が生まれない。
・ビジョンはトップが示すものであり、自分たちはそれに従うものだという固
定観念が根強く、トップがビジョンを示さないことに不満を抱くものの、トッ
プがビジョンを示しても、そこに共感が生まれず、面従腹背の状態になるか、
よくて提示されたビジョンと整合のとれた業務を進めるだけになり、そこに情
熱が存在していない。
・「トップはビジョンを示せ」と突き上げられるものの、トップの側からは主
体的に動かない理由にされている感覚もあり、その言い訳つぶしの一環として、
ビジョン策定を行う。そうして提示されたビジョンは、「顧客第一主義」、
「業界シェアダントツ一位」、「地域一番店」を目指すといった「それは出来
たらいいし、目指すのは当たり前だよね」というものになることが多く、社員
の側は思考停止の状態に陥り、そこに至る道筋としてのロードマップが見える
まで、「ビジョンがない」という大合唱を繰り広げる。「ロードマップを考え
るのは、お前たちの仕事だ!何でもかんでもトップに依存するお前たちが
間違っている!」とトップは苛立ち、社員を無能扱いする。
・「ビジョン=目標」という固定観念が強く存在するために、上場や売上高○
○円などをビジョンとして掲げる。特に上場などは、合意されやすい目標であ
るために、そこまでは勢いよく前進し、達成できる場合があるが、「なぜ、上
場するのか?」の意味づけに対する共有・共鳴がないまま目標を達成してしま
うため、上場以上の魅力的な目標を創れなくなり、組織力が低下し、上場を実
現した立役者となった優秀な人材が流出し、上場企業という安定を求めて、入
社する人材が増え、大企業病に陥る
・「何をビジョンとして掲げるのか?」に関しては、個々人の価値観や囚われ
が色濃く反映されるため、経営陣の中で合意が生まれず、何年も同じ議論を繰
り返してしまう。他の役員と比較して、社長の相対的なポジションが高ければ、
高いほど、「鶴の声」を期待し、役員は待ちの姿勢になるため、社長が業を煮
やして、「思い込み」と「思い切り」の良さでビジョンを決めてしまう。役員
以下は、「俺は違うと思うし、そんなに賛成していないんだけど、社長がそう
いっているからさ・・・」と、言い訳じみたビジョン展開がなされる。この
「業を煮やすパターン」が繰り返されていくうちに、「うちの社長はワンマン
だから」という合意が出来上がり、さらにお伺い姿勢と業を煮やした意思決定
ループが強化される。
こうした事象は、「まさしく、うちの会社で起きていることだ!」と共感され
る方が多いのではないでしょうか?そしてなぜ、多くの組織がこの罠にはまっ
てしまうのでしょうか?
それは、ビジョンに対する最大の誤解に気付いていないからではないかと思い
ます。
ビジョンに関する最大の誤解は、「ビジョンは 議論(ディスカッション) に
よって作ることができる」ということと、「言葉を誤解の生じない記号として
明確化すれば、手旗信号やモールス信号のように伝達することが可能だ」とい
うことです。
未来という何でも描ける真っ白なキャンバスに対して、何を描くのか、どんな
色で描くのか、どんな画法で描くかは、完全に個人の価値観に寄与するもので
あり、それを 議論(ディスカッション) するのは「印象派の画法で、田園風景
を描く方がいい!」、「いやいや、やっぱりシュールレアリズムでしょ。近代
都市をモチーフにシュールに描くからこそ芸術じゃないか。芸術とは破壊だよ」
と話し合うのと似ています。
ビジョンは、 議論(ディスカッション) で作ることは出来ず、 対話(ダイアロ
グ) によってしか生まれません。また、ビジョンを創るときだけでなく、それ
を展開する際にも対話(ダイアログ) が必要になります。
Uの谷を潜り、プレゼンシングに至り、源に繋がったときに初めて「力のあるビ
ジョン」の出現が可能になります。こうした真のビジョンに関して、『出現す
る未来』の中で、著者の一人であるジョセフ・ジャウオースキー氏は、次のよ
うに語っています。
「人と人、人と大きな現実が繋がった時、その場の空気が変わる。この空間で
生まれたビジョンなら信頼できる。すべてが明確にわかるからではない。大い
なる意志の存在を感じて、それに従うだけでいいからだ。ある意味で、真のビ
ジョンはあきらかになるものであって、つくられるものではない」
この「真のビジョン」、「力のあるビジョン」の認識と必要性、そして実践が
広がったとき、本当のイノベーションが始まるのだと思います。
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【未来からの問い Vol.30 】
「あなたの所属しているチームや会社において、
本当に必要な対話は何ですか?」
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中土井 僚
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2.セミナー・ワークショップ情報
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■リーダーシップ・シフト エントリーコース
ケースで学ぶ仕事やプライベートに活かせるU理論に基づく問題解決法をご紹
介します。
日程 :2017年8月2日[水] 19:00〜21:30 (受付開始:18:45〜)
場所 :オーセンティックワークス株式会社 セミナールームABC
https://goo.gl/48sq8H
参加費:3,240円(税込)(当日支払の場合は5,000円)
<詳細・お申し込み>
https://k.d.combzmail.jp/t/r8v6/g0ak25t08suip1hd4hFwm
■ビジョンインテグレーションアプローチ ベーシックコース10期
当講座では、個々人の内側に眠るビジョンを引き出し、チームの創発的な合意
を可能にする画期的なファシリテーション手法をご紹介いたします。
日程 :2017年9月23日[土]〜24日[日] 10:00〜18:30 (受付開始:9:45〜)
場所 :オーセンティックワークス株式会社 セミナールームABC
https://goo.gl/48sq8H
参加費:89.640円(税込)
<詳細・お申し込み>
https://k.d.combzmail.jp/t/r8v6/g0ak45t08suip1hd4hS2Q
※ビジョンインテグレーションアプローチコースの体験講座を開催します
■ビジョンインテグレーションアプローチ イントロセッション
当講座では、ダイバーシティに溢れるチームであったとしても、「違いを認め、
可能性の未来に向かって、力を結集する」ことを可能にするための原理・原則
をご紹介いたします。
日程 :2017年8月10日[木]
19:00〜21:30 (受付開始:18:45〜)
場所 :オーセンティックワークス株式会社 セミナールームABC
https://goo.gl/5Ivuqv
参加費:2,800円(税込)
<詳細・お申し込み>
https://k.d.combzmail.jp/t/r8v6/g0ak65t08suip1hd4hfWG
━━━━━━━━━━━━━━<発行者情報>━━━━━━━━━━━━━━
組織進化"刺激"マガジン『未来からの問い』
●発行責任者:國料 洋子
●発行元:オーセンティックワークス株式会社
●事業内容:組織進化コンサルティング
オーセンティックワークスは、社会変容テクノロジー「U理論」を活用した
プロセスコンサルテーションによって「ソーシャルフィールド(社会的な場)」
を転換し、他責・対立・迷走等、閉塞感のある組織を創発的な組織へと進化
させます。
●URL:http://www.authentic-a.com/
●お問い合わせ:
aw-office@authentic-a.com
●バックナンバー:http://backnum.combzmail.jp/?m=r8v6
●配信中止はこちら:https://regssl.combzmail.jp/web/?t=mt23&m=r8v6
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