バックナンバー BackNumber
 
タイプラボ・フォントNEWS
  発行日: xxxx年xx月xx日
このバックナンバーをメールで受け取る
ここで入力したメールアドレスはこのバックナンバーを送信するためだけに利用され、メールマガジンは読者登録されません。

==================================
         [タイプラボ・フォントNEWS]
           2006年03月 第27号 
==================================

このメールマガジンは、タイプラボのWEBサイトで無料フォントの使用者
登録をしていただいた方、タイプラボのフォントを購入していただいた方、
このメールNEWSの読者登録をされた方、などに配信しております。

ニュース番組などで桜の開花情報が流され始めました。あるサイトの情報に
よると、私の住む東京は、今月下旬から来月の中旬が花見に最適のようです。
皆さまがお住まいの地域のお花見は、いつごろでしょうか?

今号は、【書体デザイナーに聞いてみました】、【新着フォント情報】、
そして【書体の基礎知識・欧文編】という内容です。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【書体デザイナーに聞いてみました】 アトリエフォント 鈴木正広さん
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
WEBサイトで発表されているのは、5種の総合書体。アトリエフォントの文
字達は、ちょっと変わった雰囲気を持っていて、既存の書体のどれにも似て
いるところがありません(お試しフォントも3種用意されています)。
今回は、その独自な世界を創り上げているアトリエケイの鈴木正広さんに、
聞いてみました。


●アトリエフォントのサイト開設はいつでしたか。

パソコンでの書体制作は1995年で、サイト開設は2002年8月ごろからです。

●無料の字種限定版フォントの反応はいかがですか。

和文フリーフォントはマック用とウイン用の計6種のフォントがダウンロード
出来ます。登録を義務付けていませんので実数は分かりませんが、月に30人
程の人が訪れています。アトリエフォントは和風テイストで可愛いと言う声
が多いようです。

●フォント制作に使用している道具やソフトウエアなどを教えて下さい。

まず、アイデアスケッチ用の紙と鉛筆ですね。その後の作業は全てパソコン
上で制作しています。ソフトウエアはイラストレータ、フォントグラファ、
漢字エディットキットです。

●制作する時の手順を教えていただけますか。

まずアイデアスケッチを見ながらイラストレータの書類上で、仮名文字用と
漢字用のガイドラインの設計から始めます。このガイドラインが重要で、こ
こでしっかりと作り込んでおくと、後の作業がスムースに進みますね。
次に、ガイドラインを下敷きにしてペンツールで文字を描き進めます。(下
書きはありません)その後、フォントグラファに1文字ずつコピー&ペース
トします。
フォントのファミリー(ウェイト)はフォントグラファで太さを調整して制
作します。最後に、漢字エディットキットでフォントデータ化しています。

●漢字を含めた日本語書体ひとつを完成させるのにどのくらいの期間が必要
ですか。

大雑把な答えですが、アイデアを固めた時からおよそ3年は要していると思
います。

●制作中に悩むこと、難しいと感じることはありますか。

漢字はある程度バランスを取りやすいのですが、かなやカタカナのデザイン
が一番むずかしいと感じています。かなが決まればフォントは出来上がった
ようなものですね。

●書体デザイン以外にどんな仕事をされていますか。

キャンペーンロゴ等とタグ・ネームラベル等のデザインと版下を制作してい
ます。

●それらの仕事と書体デザインの仕事、時間とかエネルギーの配分は、どの
ようにされていますか。

書体デザインに費やす時間は約6割程でしょうか。ただし、収入は時間に比
例しておりません。

●製品版の収容文字種が書体によって違うようですが、理由は…。

初期の頃のフォントは、半角用カタカナと第二水準漢字は制作していません
でした。私はほとんど使う場面が無かったのですが、半角用カタカナはウィ
ンドウズユーザーに多く使われているようなので、その後のフォントでは、
半角用カタカナと第二水準漢字のなかから400字程を追加しました。
今後すべて同じ収容文字種にする予定で作業中です

●製品版フォントで人気があるのはどの書体ですか。

デザイン業以外のユーザーには、かるた書体のようなカジュアルな書体に人
気があるようです。

●自分の書体で一番好きなのはどれでしょう。

やはり最初に制作した和楽ファミリーに思い入れがあります。明朝体や隷書
体のような貴族的な書体では無く、民衆の中から生まれた工芸的な臭いがす
る書体だと思っています。

●文字に興味を持たれたのは、いつ頃で何がきっかけだったのでしょう。

たしか中学二年生の頃だったでしょうか。新聞でレタリング講座の広告を見
たのが切っ掛けでしたね。その新聞広告で、スーパーのPOPやお店のメ
ニュー等をレタリングして生活している人がいることを知りました。単純
に、自分にも出来るかなと思ったのかもしれません。

●書体デザインをする際に心がけていること、また、どんな勉強とか才能が
必要だと思われますか。

私の場合、静岡生まれの自分と人様との違いは何なのかを発見することを大
切にしています。なるべく人が目を向けていない分野の研究も必要でしょう
ね。それが個性につながってゆく筈だと信じています。
最低でも1ウェイト約4000文字を制作することになるので、しつこい性格も
必要かな。千日を鍛として、万日を練とす…と言う言葉のように10年間ひた
すら文字を創り続けることで、ようやく文字が見えてきたような気がします。
…遅すぎるかな。

●影響を受けた書体や書体デザイナーを教えてください。

影響を受けたかどうかわかりませんが、中村征宏氏のナールが写植書体とし
て出始めのころ、とても新鮮な印象として覚えています。明朝体、ゴシック
体には無い、軽やかな時代の風を感じさせた書体でしたね。

●今後のフォント制作の予定などお聞かせください。

今は、最初にデザインした和楽書体のリニュアル作業に取り組んでいます。
もともと和楽書体はバラつきのある書体ですが、もう少しフラットな文字組
にする予定です。今後も、日本文化を反映させた書体創りを続けたいです
ね。

●現在、以下の3種の方法でフォントを販売されていますよね。
それぞれ体験して感じた、メリットやデメリットなど教えていただけますか。

・自分のサイトからの通信販売
販売にまつわる煩わしさも多いのですが、直接メール等でユーザーと接する
ことで、人柄やフォントの使われ方などが見えてくることは、楽しいことで
す。

・市販のフォントパッケージに収録(データクラフト社FONTWIRE3400)
販売の煩わしさはありませんが、ロイヤリティは書体数割りなので、ロイヤ
リティのうまみはありません。
多くの人に自分のフォントを使ってもらうことで、書体の認知度が上がるこ
とに期待しています。

・デザイナー参加プロジェクト(FONT1000)
個性的なフォントがほとんどで、使われる場面がまだまだ少ないようです。
他のフォントに比べると価格が割り高なのも、売り上げが伸びない原因かも
しれませんね。
FONT1000はフォントの楽しさを広げる啓蒙活動だと思っています。

●いろいろと興味深いお話し、ありがとうございました。


アトリエフォント
http://www004.upp.so-net.ne.jp/A-kei/
和楽
http://www004.upp.so-net.ne.jp/A-kei/f_waraku.html
雅楽
http://www004.upp.so-net.ne.jp/A-kei/f_gagaku.html
かるた
http://www004.upp.so-net.ne.jp/A-kei/f_karuta.html
喜楽
http://www004.upp.so-net.ne.jp/A-kei/f_kiraku.html
駿河
http://www004.upp.so-net.ne.jp/A-kei/f_suruga.html

データクラフト社 FONTWIRE3400
http://www.sozaijiten.com/products/fw-w/

FONT1000
http://www.font1000.com/


◆鈴木正広さんの略歴

1954年 静岡市生まれ
1977年 アトリエケイ設立
1979年 日本デザイン専門学校卒
1980年 NAAC展タイポグラフィ部門入選
1996年 国際タイプフェイスコンテスト入賞
1996年・98年・00年・04タイポグラフィ年鑑入選
2002年 タイポグラフィ講座講師(バンタンJスクール)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【新着フォント情報】最近発表されたフォントや最近発見したサイトなど
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●OTEdit for Mac
武蔵システムより、OpenTypeフォントを作成できる OTEdit for Mac が発売
されました。
http://musashi.or.tv/oteditmac.htm

●文字の本
タイプフェイス(活字書体)を中心に広く文字の魅力を伝えることを目的に
つくられた本だそうです。
http://www.typeproject.com/

●清朝官刻体Combination3
和字書体の「はなぶさ」「さくらぎ」「まどか」それぞれに、漢字書体の清
朝官刻体「蛍雪」が標準セットになっています。
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/kinkido/

●D書体(仮称)
タイプラボが、開発中のサンセリフ系総合書体のサンプル画像を公開。
http://www.type-labo.jp/Sohgohwaku.html

●Linotype FontExplorer X Version 1.0
Linotype社から、フォント管理ソフト「Linotype FontExplorer X Version
1.0」が正式にリリースされました。
http://www.linotype.com/fontexplorerX



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【欧文書体の基礎知識】トランディショナル・ローマン体 今田欣一(寄稿)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1 ジョン・バスカーヴィル(1706―75)

 トランディショナルとは「過渡期の」という意味の形容詞である。オール
ド・ローマンからモダン・ローマンへの過渡期のローマン体ということであ
る。
 代表的なトランディショナル・ローマン体が「バスカーヴィル
(BASKERVILLE)」である。イギリスのジョン・バスカーヴィル(1706―75)
の活字は、オールド・ローマンの影響を残しながらも、コントラストを強め
た水平垂直にちかい骨格になっている。
 バスカーヴィルはイギリス中南部のウィスター州で生まれた。17歳のころ
からカリグラフィの教師をするかたわら、石彫の仕事もしていた。30代にな
ると漆器業で成功をおさめ、イージー・ヒルと名づけたバーミンガムの広大
な土地を購入している。
 バスカーヴィルは1750年、44歳のときに印刷業に取り組んだ。活字父型彫
刻師のジョン・ハンディ(?―1793)を雇って、イージー・ヒルの工房で書
体設計の地道な研究と実験をくりかえした。
 1757年に出版された古代ローマの詩人ウェルギリウスの『田園詩と農事詩』
は、グレート・プライマー(18ポイント相当)のバスカーヴィル活字で組ま
れている。1758年にはミルトン著『失楽園』を出版したあと、ケンブリッジ
大学とオックスフォード大学の大学出版局で、聖書の印刷にかかわることに
なる。
 バスカーヴィルは活字だけではなくて、印刷インキや製紙など印刷技術の
向上にも努めている。

2 ピエール・シモン・フールニエ(1712―68)

 フランスのピエール・シモン・フールニエ(1712―68)の活字「フールニ
エ(FOURNIER)」もトランディショナル・ローマン体である。フールニエ活
字はバスカーヴィル活字と同様に、画線の縦横比が大きく、均質で整理され
ているという特徴をもっている。
 フールニエはパリで生まれ、父ジャン・クロードの郷里であるオセールで
暮らした。17歳の時フランスの宮廷文化の華やかなロココ時代のパリに戻り、
サン・リュックのアカデミーで絵画をまなんだ。
 その後フールニエは1736年に金属活字の制作をはじめた。1742年に刊行さ
れた『印刷活字見本』は世界各地に10部が現存していることが知られている。
この活字書体見本帳には1737年に活字サイズの体系をまとめた「比例対照表」
もふくまれている。
 フールニエは1764年に『タイポグラフィの手引き』第1巻を、1766年(実
際には1768年)に第2巻を刊行している。第1巻は活字父型の彫刻と鋳造につ
いてが詳細に解説され、第2巻にはフールニエが制作したほとんどの活字書
体見本が掲載されている。
 フールニエが考案した印刷活字のためのポイント・システムの原理は、現
在にも息づいているのである。


バスカーヴィル
http://www.myfonts.com/search?search%5Btext%5D=BASKERVILLE

フールニエ
http://www.linotype.com/1692/fournier-family.html

●今田欣一さんのサイト「欣喜堂★活字書体設計」
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/kinkido/



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【Windowsのフォントトラブルで困っていませんか】
 2号目に掲載した情報ですが、トラブル体験者が多いので毎回掲載します
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 以下のようなフォントトラブルを解消します。
・ウィンドウ右上の最大化や最小化ボタンが数字などになってしまう
・ドロップダウンリストの▼や、スクロールバーの矢印が、
 数字やおかしな文字になってしまう
・アプリケーションで選択できるフォントが減ってしまう
・フォントをインストールできない
・フォントをインストールしても、アプリケーションのフォントリストに
 反映されない
・フォントが横向きになってしまう

●フォントトラブル対処法とフォントの限界
http://homepage2.nifty.com/winfaq/fontstrouble.html



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【以下はタイプラボからのお知らせです】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★斬新なデザインの書体を作っていた書体デザイナーも、経験が長くなると
次第に大人しいデザインの物しか作らなくなる傾向があります。今回インタ
ビューした鈴木さんの書体デザインは、新鮮で若々しいと思います。

★D書体のサンプル画像を公開いたしました。下町フォント日記に目を通し
ている方なら、私が5年前から制作していることは知っているはずです。で
も、事務所を訪れてくれた人以外には、見せたことはありませんでした。ど
うってことのないツマラナイ書体ですみません。

★「書体の基礎知識」欧文編、次回は「モダン・ローマン体」の予定です。
 漢字書体編は、当サイト上で↓まとめて見られるようになりました。
http://www.type-labo.jp/Shotainokisowaku.html

★当サイトの掲示板をご存じでしょうか?
 あなたのパソコン内の画像を掲載することもできます。

●読者の広場、フォントに関係ない話題でもOKな掲示板
http://www.type-labo.jp/Dokusyanohiroba.html
●書体やフォント情報全般の掲示板
http://www.type-labo.jp/Danwasitsuwaku.html
●セプテンバーフォントの掲示板
http://www.type-labo.jp/Septkeijiban.html
●あられフォントの掲示板
http://www.type-labo.jp/Araletkeijiban.html
●キャパニトフォントの掲示板
http://www.type-labo.jp/Capanitodohkohkai.html
●アニトフォントの掲示板
http://www.type-labo.jp/Anitokeijiban.html
●えれがんとフォントの掲示板
http://www.type-labo.jp/Elegantodohkohkai.html
●墨東フォントの掲示板
http://www.type-labo.jp/Bokutohkeijiban.html

★フォントNEWSバックナンバーは↓こちらで見ることができます…
http://bn.combzmail.jp/bn/e0wy_backnumber.htm


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎タイプラボのフォントは、以下の2つの方法で購入できます。

▼▼ダウンロード式▼▼
・価格と詳細、購入手続きなどは↓こちら(ショップ専用サイトに販売委託)
https://www12.myssl.jp/www.type-labo.jp/web/DLkounyuwaku.html

▼▼CDでお届け式▼▼
・価格と詳細、購入手続きなどは↓こちら(ピーシークラフトに販売委託)
https://www12.myssl.jp/www.type-labo.jp/web/Pccraftwaku.html


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◆このメールが届いた方は、読者登録されております。
 今後このようなメールが必要でなく、登録を解除されたい方は、
 この↓URLをクリックするだけで、登録が解除され配信されなくなります。
https://regist.mail-magazine.co.jp/d/e0wy&m=E-Mail
 登録解除された方には、当社で頒布しているフォントのサポート情報など
 もお伝えできなくなります。

◆メールアドレスが変わった方、配信先アドレスを替えたい方は、
 当サイトのトップページ、右上方にあるフォントNEWS配信の、アドレ
 ス入力欄とボタンを使って、不用なアドレスを解除し、新しいアドレスを
 登録してください。 
http://www.type-labo.jp/


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■    ■       タイプラボ・フォントNEWS 第27号
  〜〜    創刊日  2004年1月8日
 ―◯◯―   発行者  有限会社タイプラボ 佐藤 豊
  ……    MAIL typelabo@type-labo.jp
■    ■  WEB  http://www.type-labo.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━