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タイプラボ・フォントNEWS
  発行日: xxxx年xx月xx日
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         [タイプラボ・フォントNEWS]
           2005年2月 第14号 
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このメールは、タイプラボのWEBサイトで無料フォントの使用者登録をし
ていただいた方、タイプラボのフォントを購入していただいた方、このメー
ルNEWSの読者登録をされた方、などに配信しております。

今年の杉花粉飛散量は例年の何10倍…とか聞くとゾっとします。私はまだ症
状が出ていませんが、少し心配です。皆様も用心してくださいね。
今号は、【書体デザイナーに聞いてみました】【アニト-レリーフをCDで
お届け開始報告】【新着フォント情報】そして連載の【書体の基礎知識】と
いう内容です。



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【書体デザイナーに聞いてみました】 AXISフォント 鈴木功さん
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書体ウォッチャーで、これまでに何回か掲載している「AXISフォント」。
作者の鈴木功さんが運営するサイト「タイププロジェクト」は、情報がとて
も充実していて、AXISフォント制作記録なども載っています。今回はできる
だけ重複を避けた質問をさせていただきました。


●独立して最初に発表した仕事がAXISフォントでしたよね。
7ウエイト揃った日本語の総合書体ということが私には驚きでしたけど、こ
れを作りたくて独立したのですか。

はい、AXISフォントを作るために会社を辞めました。
「よし、行くぞ」という感じです。
 
●鈴木さんのフォント製作の手順を教えて貰えますか。

B5サイズの大学ノートかコピー紙の裏に、青色か黒色のサインペンで
こんなのはどうかなと文字のアイデアをスケッチするところから始まります。
そうやって文字のスケッチをたくさんストックしておいて、ここぞというと
きにノートを引っぱり出すというパターンが多いです。

漢字は、字面の大きさや線の太さなどを決めたらすぐにMacで作り始めます。
仮名はペンで書いたスケッチをスキャナで取り込み、グラフィックソフトの
アドビ・イラストレーターでアウトラインをとります。
あとはひたすら修正/確認の繰り返しです。

●使用している道具やソフトウエアなどを教えて下さい。

メインマシンは、アップル社のeMacです。
OSはMacOS9、アプリケーションは、書体制作の全行程の9割以上がイラスト
レーターで、あとはいろいろな人の助けを借りながらフォント化しています。
おおよそですが、
イラストレーター→フォントグラファ→ヒシキCIDフォント作成ツール→
アドビ・フォント・デベロップメント・キットという流れです。

●制作中に大変だったこと、楽しかったこと…を憶えていますか。

書体制作はいろんな段階で楽しめます。
たとえば、いいアイデアが浮かんでそれがスケッチで表現できたとき。
そのスケッチをスキャナで取り込んで、アウトラインをとった文字をいくつ
か並べてみたとき。
修正した結果、文字がよりよいものになっていくとき。
データ化されたフォントをキーボードで打って文字が表示されたとき。
そのフォントで組んだ文章をプリントアウトした紙を手に取ったとき。
最後に、一番うれしいのは、自分以外の人が自分のつくったフォントを使っ
てくれて、実際にそのフォントが使われているのを見たとき。
日本語書体の制作はしんどいですが、それをおぎなって余りある喜びを長期
にわたって与えてくれます。
AXISフォントの場合は構想を練るのが楽しかったです。

●発売されてから1年10ヶ月過ぎましたが、反応はいかがですか。

ここ半年ほどいろいろなところでAXISフォントを見かけるようになりました。
期待していたほどは売れていませんが、それでも書体制作で生計をたてるだ
けの収入にはなっています。
AXISフォントの使用例については『MacPower3月号』(2005年2月18日発売)
に掲載される予定ですので是非ご覧ください。

●常用漢字すべてを含んだ試用版無料フォントの反応はいかがですか。

試用版の登録ページを公開してから二年七ヶ月がたち、ダウンロード数は
15,000を超えました。六割がWindowsユーザー、四割がMacユーザーです。
正規登録していただいた方の数は、約11,000人です。
登録の際にコメントを書いていただく欄があるのですが、比較的好意的なも
のが多いです。批判的な意見も含め、何か書いてあるととても嬉しいですね。
ウェブサイトなどでよく使って頂いているようです。

●サイト上の日記をみると、次の書体を制作されているようなのですが、
内容を少し教えて貰えませんか(笑)。

「AXISフォントに関連した書体」というところでご勘弁ください。
AXISフォントは、ウルトラライトという極細の太さを持っているというほか
はデザイン上それほど特徴のある書体ではありません。
しかし、現在開発中の書体は、見た目にもインパクトのあるフォントです。
今夏には発表できるかと思いますのでどうぞご期待ください。

●文字に興味を持たれたのは、いつ頃で何がきっかけだったのですか?

大学四年生のとき、文字関連のゼミに参加したのがきっかけです。
漢字の認識に関する研究と甲骨文字の研究でした。

●書体デザインをする際に心がけていることはありますか?

文字の声を聞くことです。
書体設計の準備段階が重要なのは言うまでもありませんが、いったん書体制
作に入ってしまえば、あとはルーティンワークとの闘いです。
単なる「こなし仕事」にならないように、一字一字が発する声に耳を傾ける
ことが大切だと思っています。
もちろん書体設計の基本方針にのっとったうえでのことですが、「オレの足
はこんなに短くないぞ」とか「ワタシの腰はもうすこしくびれていたほうが
いいんじゃない?」という文字のつぶやきを聞くよう心がけています。

●書体をデザインするには、どんな勉強とか才能が必要だと思われますか。

向き不向きはあるかもしれませんね。
才能は「好き」の延長に開くものではないでしょうか。
勉強も「好き」と「必要」に従うのがよいと思います。

●影響を受けた書体デザイナーを教えてください。

タイプデザインのアプローチについてはフランスのポルシェというタイプデ
ザイナーから、タイプフェイスと向き合う姿勢は小林章さんから、書体デザ
イナーの身の処し方については佐藤豊さんから、それぞれ少なからぬ影響を
受けています。
師匠の小塚昌彦氏から受けた薫陶は計りしれません。

●あ、こんなところで私の名を出すとは、お世辞上手ですね。削除せずにこ
のまま掲載します(笑)。では、好きな総合書体は何ですか。

写研の紅蘭楷書です。屈指の名作だと思います。

●書体デザイン以外には、どんなお仕事をされていますか

ロゴタイプの仕事を年平均で4本くらいでしょうか。
二年まえからデザイン系の大学で書体関連のことを中心に教えています。

●どうもありがとうございました、これからもがんばってくださいね。


書体ウォッチャーに掲載されたAXISフォントの情報
http://www.type-labo.jp/FontWatcher16.html#axisfontDL
http://www.type-labo.jp/FontWatcher15.html#axisfont
http://www.type-labo.jp/FontWatcher15.html#axisfonttest

写研の紅蘭楷書サンプル(NET-DTPより)
http://www.net-dtp.com/kyounosyotaimihon/03.5.27/kyounosyotaimihon_03.5.27.html

タイププロジェクト
http://www.typeproject.com/


◆鈴木 功(すずきいさお)さんの略歴
1967年 名古屋生まれ
YAG亀島美術研究所を経て
1991年 愛知県立芸術大学デザイン科卒業
1993年から2000年まで、タイプデザイナーとしてアドビシステムズ株式会社
に勤務
2001年 タイププロジェクト設立
2001年9月 デザイン誌「AXIS」リニューアルのために制作されたAXISフォ
ントを発表
2002年 ポーラ美術館サイン用書体をデザイン



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【新着フォント情報】最近発表されたフォントや最近発見したサイトなど
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●映画字幕書体 
7号で特集した「映画の字幕文字」で、いくつかフォントを紹介しましたが、
とうとう本物の登場です。2月4日からダウンロード販売が始まりました。
http://www.jimaku-font.com/

●KeiType(ケイタイプ)…軽量アウトラインフォント
携帯電話などに搭載するために開発したから「ケイタイプ」?
モリサワと富士通が共同開発したそうです。
http://www.morisawa.co.jp/news/fresh/20050202j.html
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2004/12/21-1.html

●歴史の文字 記載・活字・活版
(東京大学総合研究博物館刊行物データベースより)
いま日本の活字が滅びようとしている。活字が滅びるといっても、むろん、
文字が消えて無くなるという意味ではない(サイト内文章から引用)。
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/1996Moji/index.html

●タイポグラフィの世界 書体編
千都フォントライブラリー「日本の活字書体名作精選」の原字再設計者とし
ておなじみの小宮山博史氏による特別寄稿。筆者自身による用語解説付き。
http://www.screen.co.jp/ga_product/sento/pro/index.html#sekai



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【アニト-レリーフをCDでお届け】 お待たせいたしました!
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1月12日に頒布開始したアニト-レリーフ。ベクターでのダウンロード販売が
先行しておりましたが、2月7日より「CDでお届け式」での販売が開始され
ました。

クレジットカードは使いたくない・銀行や郵便局で支払いたい・商品を購入
所有したという実感が欲しい・会社や組織で購入したい……と思われている
方にお薦めです。

●CDでお届け式(ピーシークラフトに販売委託)
 支払い方法(4種類)
 ・後払い決済サービス(商品到着後にコンビニ・銀行・郵便局でお支払い)
 ・クレジットカード(お支払い手続き完了後に商品発送)
 ・代金引換便(商品到着時にお支払い)
 ・銀行振込(ご入金確認後に商品発送)
 商品の実物が届くので、会社や組織内でも購入しやすいと思います。

◎アニト-レリーフ 1フォント 3780円(税込み)
http://www.type-labo.jp/Pccraftwaku.html



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【書体の基礎知識】 元朝体 Yuan-style type  今田欣一(寄稿)
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「明朝体や宋朝体は知っているけど、なぜ元朝体はないの?」
 このような疑問があるかもしれない。楷書体系統の漢字書体は、中国のそ
れぞれの王朝の時代をあらわす名称で呼ばれてきた。このうち元朝体は、わ
が国の活字はもちろんのこと、中国の活字にも存在しない。
 清朝体も、わが国固有の書体に冠せられ「せいちょうたい」などと呼ばれ
ていたこととは別に、清王朝の武英殿や揚州詩局の刊本字様(木版印刷の書
体)を源とする書体を「清朝体」とすれば納得がいく。
 元朝体も刊本字様として存在するのである。中国・元代(一二七一〜一三
六八)は漢民族圧迫政策により書物の出版にはきびしい制限が加えられた
が、それでも福建地方の民間出版社では多くの書物を刊行している。その刊
本字様は趙子昂(一二五四〜一三二二)の書風によるとされる脈絡を少し残
した書体で、これを中国では元体とよんでいる。わが国の言い方では元朝体
である。
 ところが書誌学などでは「趙子昂体」「松雪体」と呼ばれることが多いそ
うだ。筆者は、元王朝が蒙古族による征服王朝であったために漢民族として
は「元」という呼称をもちいたくなかったのではないかと想像している。だ
からこそ金属活字としても継承されなかったし、わが国にも輸入されること
はなかったのである。
 清朝体という呼称もまた中国でもちいられていないのは、清王朝も満真族
による征服王朝であることからだろう。あくまで筆者の想像であるが、わが
国においても日清戦争の影響によって、清朝体を「しんちょうたい」から
「せいちょうたい」と言い換えたのではないかともおもえるのである。
 さて、元朝体は福建地方の民間出版社からつくりだされた書体である。宋
代の福建地方の出版社では余仁仲の万巻堂が知られているが、元代になると
余志安の勤有書堂が有名になった。この勤有書堂の刊本字様こそが典型的な
元朝体である。
 この書体は楷書体系統ではあるが、行書体の筆法も合わせ持つものである。
あるいは御家流を読みやすくしたようなイメージもあり、和字書体とも調和
する。むしろ日本人好みの書体なのではないだろうか。


●欣喜堂 試作元朝体「建安」
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/kinkido/Chinese/Jianan.gif

●この原稿の元になった書籍は、ネットから購入できます
タイプフェイス・デザイン事始 2,100円 
http://www.rakuten.co.jp/book-ing/397878/

●今田欣一さんのサイト
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/kinkido/



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【Windowsのフォントトラブルで困っていませんか】
 2号目に掲載した情報ですが、トラブル体験者が多いので毎回掲載します
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 以下のフォントトラブルを解消します。
・ウィンドウ右上の最大化や最小化ボタンが数字などになってしまう
・ドロップダウンリストの▼や、スクロールバーの矢印が、
 数字やおかしな文字になってしまう
・アプリケーションで選択できるフォントが減ってしまう
・フォントをインストールできない
・フォントをインストールしても、アプリケーションのフォントリストに
 反映されない
・フォントが横向きになってしまう

●rmttfcache.vbs
http://homepage2.nifty.com/winfaq/fontstrouble.html



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【以下はタイプラボからのお知らせです】
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★タイププロジェクトのサイト。彼に聞こうと思っていたアレコレは、殆ど
 掲載済み。フォントを購入しようとする人に必要な情報が網羅されていて
 感心しました。
 また、「文字の声を聞くことです」という言葉にもドキッとしました。

★掲示板「読者の広場」をご存じでしょうか。このフォントNEWSの記事
 に関する話題、タイプラボのサイトのこと、フォントに関係なくてもOK
 です。気軽に書き込んでくださいね。
 http://www.type-labo.jp/Dokusyanohiroba.html

★今田さん執筆の「書体の基礎知識」、次回は「ラテン体」の予定です。

★フォントNEWSバックナンバーは↓こちら…
 http://bn.combzmail.jp/bn/e0wy_backnumber.htm

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◎タイプラボのフォントは、以下の2つの方法で購入できます。

▼▼CDでお届け式▼▼
・価格と詳細、購入手続きなどは↓(ピーシークラフトに販売委託)
 http://www.type-labo.jp/Pccraftwaku.html

▼▼ダウンロード式▼▼
・価格と詳細、購入手続きなどは↓(ベクター・プロレジに販売委託)
 http://www.type-labo.jp/Vectorwaku.html
 ご購入日から5年間、合計5回まで同じ商品をダウンロードできます。

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■    ■       タイプラボ・フォントNEWS 第14号
  〜〜    創刊日  2004年1月8日
 ―◯◯―   発行者  有限会社タイプラボ 佐藤 豊
  ……    MAIL typelabo@type-labo.jp
■    ■  WEB  http://www.type-labo.jp/
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