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[タイプラボ・フォントNEWS]
2004年7月 第7号
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このメールは、WEBサイト「ようこそ!書体の世界へ」で無料フォントの
使者登録をしていただいた方、タイプラボのフォントを購入していただいた
方、このメールNEWSの読者登録をされた方、などに発送しております。
今回の内容は、最近よく目にする【映画の字幕文字】と、連載の【書体の基
礎知識】です。
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【映画の字幕文字】 外国映画の画面に出てくる、あの文字のことです
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最近、テレビコマーシャルなどで、独特の雰囲気を持った映画用字幕文字が
随分と使われています。
映画の字幕というと、制作クレジットに出てくる戸田奈津子・清水俊二・高
瀬鎮夫…などの名前が浮かびますが、彼らは字幕の翻訳者。私たちが実際に
目にする画面の文字を描いているのは、タイトルライター・描き屋などと呼
ばれる職業の方達です。普通、この方達の名前がクレジットに出ることはあ
りません。
映画字幕用に描き起こされる文字は、映画文字・シネマ文字・映書体・スク
リーン体…などと呼ばれているようです。
専門職の方が描いた文字は、映画用35ミリサイズのフィルム上に配置するた
め、1文字1ミリ以下のサイズに縮小されて使われます。とても小さいです
ね。顕微鏡で検査するそうです。
字画の再現性を高めるため、文字の横線の数は何本まで(6本か)…と決め
られていたようで、画数の多い文字は大胆に省略した字体にするしかありま
せん。
また、初期の字幕制作は、映画フィルムに直接文字の形の凸版を押しつけ、
画像に穴を空ける(透明にする)方式だったため、「口」などの文字の線で
囲まれた内側部分は、抜け落ちて「■」こういう状態になってしまうそうで
す。それを避けるために、文字線画の一部分を切り離す(その部分は空気穴
と呼ばれる)ことが必要とされました。
1文字の中で使える字画の本数制限や、画線で囲まれた部分を作ってはいけ
ない…という制約の中で、あの独特の骨格や略字体が生み出され、しだいに
字幕用書体のスタイルが確立されていったのだと思います。
現在では字幕制作方式が進歩したため、空気穴の必要も字画本数制限も無く
なり、どんな書体でも字幕にすることが可能になったようです。細めの丸ゴ
シック書体なども、ずいぶん使われていますよね。
以下に、字幕文字を描いている専門家・学べる場所・字幕制作の工程・歴史
や背景・無料の字幕風フォント…などの情報を集めてみました。
字幕文字の、奥深い独特な世界を存分に楽しんでください。
●佐藤英夫さん・武さん
リンククラブ ニュースレター2003年03月号 人間と芸術
http://info.linkclub.or.jp/nl/2003_03/art.html
●『じまく屋』鏡古
橋本鏡古さん 自己紹介
http://www.in-tel.co.jp/inpaku/jimakuya/kyoko1.html
朝日新聞で紹介された記事が興味深い
http://www.in-tel.co.jp/jimakuya/
●シネマ文字を書こう(次期開講日は7月13日!)
「池袋コミュニティカレッジ」 講師 渋谷展子さん
http://college.e-doc.co.jp/ikepri/files/200404/homepage/public/hp/20040413050.html
●映画と字幕 日本シネアーツ社
かなり詳しく丁寧に説明されています。
http://www.cinearts.co.jp/page04.html
●ぷらすあるふあ
無料の字幕風フォント「あるしねま・あるしねま-G・ぜっとしねま」
http://www.soho-net.ne.jp/~alpha/
●Chiphead
無料の字幕風フォント「しねきゃぷしょん」
http://chiphead.jp/
●放射16号
無料の字幕風フォント「てあとる16」
http://www.ee.e-mansion.com/~t-wtnb/
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【書体の基礎知識】清朝体(Qing-style type) 今田欣一(寄稿)
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中国・清代(1616―1912)の木版印刷にあらわれる書写系書写風の印刷書
体を「清朝体」という。康煕年間(1662―1722)には紫禁城(現在の故宮)
の西華門内の武英殿に編纂所が設けられた。武英殿の刊本にあらわれた書写
系書写風の字様は、揚州詩局において完成された。
揚州詩局『全唐詩』系統と認められるものには、名古屋・津田三省堂で輸
入した正楷書体がある。正楷書体はもともとは上海の漢文正楷書局で制作さ
れた書体で、鄭午昌の筆耕によるものとされている。写真植字文字盤におけ
る紅蘭楷書(写研)も、上海から購入した清朝体で『全唐詩』系統である。
正楷書体は、漢文正楷書局という社名からとられたものである。本稿では
正楷書体という呼称をさけ、その起源を明確にするということで「清朝体」
という分類名をもちいることにする。
正楷書体以外では、揚州詩局『全唐文』の系統にちかい書体として教科書
体がある。国定教科書時代に井上千圃(高太郎 1872?―1940)が版下を書
いたもので、石井教科書体(写研)もこの教科書体がベースになっている。
フォントワークス・グレコについて『組見本帳』(フォントワークスジャ
パン)に以下のような記載がある。
サイノタイプ楷の歴史は1930年代の上海に遡ります。当時、上海世界
書局に勤めていた二人の人物が描いていた夢、広範囲な印刷に適した質
の高い楷書体を創り上げるという構想がサイノタイプ楷誕生の発端とな
りました。一人は唐朝の欧陽詢流および柳公権流の書道家である陳履担
氏。もう一人は、金属活版の熟練製作者である周煥斌氏です。
周煥斌は1943年に華文銅模鋳字廠を設立し、この活字書体の製造をおこ
なった。これが金属活字、写真植字機文字盤、さらにはデジタルタイプとし
て中国全土に普及し、わが国においてもフォントワークスによって「グレ
コ」として発売されている。
活字書体としての清朝体は、書写の楷書とは少し違うものである。清朝体
は活字版の適性を加味して造形されたものだ。どのような文字との組み合わ
せでも、美的感覚を満足できることが必要である。
書写と彫刻の技術の融合こそが優れた清朝体を生みだすと思う。何よりも
紙面から醸し出される雰囲気を重視した上で、筆法や結構法をよく理解し、
均衡と統一をいかに叩き込んでいくかがキー・ポイントである。
リョービ・花蓮華は台湾・文鼎科技との共同開発によるものである。ほか
には台湾・華康科技の開発によるダイナコムウェア・楷書体、イワタ・正楷
書体、モトヤ・正楷書体などがある。
*
なお弘道軒清朝体は、東京・弘道軒の神崎正誼(1837―1891)が新刻した
もので、小室樵山(正春 1842―1893)が版下を書いたといわれている。ま
た東京築地活版製造所の楷書体と弘道軒の清朝体はほぼ同じ書体と思われる
が、いずれも品位に欠けたものである。
リョービ「花蓮華」
http://www.type-labo.jp/GIF.IMAGE/RyobiQing.gif
フォントワークス「グレコ」
http://www.type-labo.jp/GIF.IMAGE/FwQing.gif
欣喜堂 清朝体(武英殿刊本系統)試作書体「燕京」
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/kinkido/Chinese/yanjing.gif
●この原稿の元になった書籍は、ネットから購入できます
タイプフェイス・デザイン事始 2,100円
http://www.rakuten.co.jp/book-ing/397878/
●今田欣一さんのサイト
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/kinkido/
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【Windowsのフォントトラブルで困っていませんか】
2号目に掲載した情報ですが、トラブル体験者が多いので毎回掲載します
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以下のフォントトラブルを解消します。
・ウィンドウ右上の最大化や最小化ボタンが数字などになってしまう
・ドロップダウンリストの▼や、スクロールバーの矢印が、
数字やおかしな文字になってしまう
・アプリケーションで選択できるフォントが減ってしまう
・フォントをインストールできない
・フォントをインストールしても、アプリケーションのフォントリストに
反映されない
・フォントが横向きになってしまう
●rmttfcache.vbs
http://homepage2.nifty.com/winfaq/fontstrouble.html
●rm_ttfCache
http://www.asahi-net.or.jp/~nh4t-ymmt/FreeSoft/rm_ttfCache/index.html
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【以下はタイプラボからのお知らせです】
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★日本初の字幕映画は『モロッコ(1931年)』だそうです。字幕のことを今
回いろいろ調べてみました。数年前に調べたときは、情報が少なくてがっか
りしましたが、今回はかなり情報が見つかりました。インターネットの情報
量が確実に増えていることを実感しました。
今回掲載したものが、見つかった情報の全てではありません。重複したもの
や似たような情報は、取捨選択いたしました。
★今田さん執筆の「書体の基礎知識」、次回は「隷書体」の予定です。
★フォントNEWSバックナンバーは↓こちら…
http://bn.combzmail.jp/bn/e0wy_backnumber.htm
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◎タイプラボのフォントは、以下の2つの方法で購入できます。
▼▼CDでお届け式▼▼
・価格と詳細、購入手続きなどは↓(ピーシークラフトに販売委託)
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▼▼ダウンロード式▼▼
・価格と詳細、購入手続きなどは↓(ベクター・プロレジに販売委託)
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お伝えできなくなります。
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■ ■ タイプラボ・フォントNEWS 第7号
〜〜 創刊日 2004年1月8日
―◯◯― 発行者 有限会社タイプラボ 佐藤 豊
…… MAIL
typelabo@type-labo.jp
■ ■ WEB http://www.type-labo.jp/
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